アツイシャ

最後まで諦めない
がん医療を実践する。

【PROFILE】

江戸川病院
がん薬物療法専門医/明星 智洋

2001年熊本大学卒業。その後、岡山大学に入局。関連病院で研修後、虎の門病院で骨髄移植を学び、がん研究会有明病院でがん薬物療法全般を学ぶ。2009年から江戸川病院での腫瘍内科の立ち上げに携わり、無菌治療室、外来化学療法センター、がん免疫治療センター、プレシジョンメディスンセンター、感染制御部の立ち上げを担う。高校2年生のころ、大好きだったおばあちゃんがすい臓がんになったことをきっかけに医師を目指すようになった。

遺伝子を解析し、個人に合わせた最適ながん医療を。

明星氏が勤務する江戸川病院は、2018年2月にプレシジョンメディスンセンターを立ち上げている。抗がん剤は、同じがんであっても人によって効く場合と効かない場合がある。これまでの抗がん剤治療は、『確実に効くとは言えないがなるべく確率の高い薬を投与する』ことがベストな方法だった。ただし、薬が効かなければ当然がんは進行するし、結果的に効かない薬であったとしても、副作用は出てしまう。

プレシジョンとは、正確、精密といった意味を持つ英単語だ。がんの組織を遺伝子検査にかけることで、効果のある抗がん剤を最初に特定することが可能になる。がん治療に大きなイノベーションを起こす可能性を秘めていると言えるだろう。しかし明星氏は言う。

「160個の遺伝子を解析して、効く抗がん剤を特定することができる。これは間違いなく素晴らしい取り組みです。ただ、現在の日本では、『この抗がん剤が効く』と分かっても、その薬を使用することができないことも多いんです」



医療行為の多くは、保険制度の元におこなわれる。国民皆保険の日本はメリットもたくさんあるが、こうした最先端の医療が保険適用外となってしまうことも少なくない。

「これまでのデータを元に、胃がんにはこの薬、肺がんにはこの薬と、ガイドラインが定められているんです。該当する薬を使えば保険適用されるんですが、遺伝子検査の結果別の薬が良いと判明しても、その薬に保険を適用できるとは限りません。患者さんとしては自費診療で進めるしかないんですが、これをやってくれる病院はほとんどないのが現状なんです。日本では、自費診療をおこなう医者が『金儲け目的のアウトロー』だとレッテルを貼られる傾向があります。国の定めたガイドラインを逸脱して治療することで、責任を負うことを避けたい気持ちもあるのかもしれません」

数年待てば国の制度も変わるかもしれない。だが、がんを患っている方々にとって数年という時間は絶望的に長い。そこで江戸川病院では、明星氏が中心となってプレシジョンメディスンセンターを立ち上げ、全国から自費診療での抗がん剤治療を希望する患者さんを受け入れることを決めた。

明星氏が最も大切にしているのは、「実践する」というスタンスだ。がん患者さんを前にして「諦めてない」と言うことは誰にでもできる。しかし言葉だけでは患者さんを救えない。まだ治療の選択肢があるのに制度やしがらみによって実践できないということだけは絶対に避けたい、と明星氏は熱く語ってくれた。

既成概念を超えていく。

院内のいたるところにポップアートが飾られ、ゾウの形をしたMRIを導入、リクガメやフラミンゴ、エミューなどたくさんの動物も飼育されている。美術館のような病院、ユニークすぎる病院として、江戸川病院をご存知の方もいるだろう。

「江戸川病院にきたのは30代前半の頃。前院長の『少しでも患者さんを癒したい、笑顔にしたい』という想いに共感したことが決め手です。腫瘍内科の立ち上げを任せていただいたんですが、ゼロからいきなり52床もの病棟を作ってくださって。骨髄移植ができる無菌室も8つ用意してくれました。これはもう、相当のことなんですよ。知識や技術があってもハードがなければ治療はできないので、全面的にバックアップしてくれた前院長には感謝しています」

腫瘍内科を都内でも有数の規模に育て上げ、がん免疫治療センター、プレシジョンメディスンセンターも立ち上げた明星氏。副部長、部長、センター長と、非常に多くの肩書きが名刺に記載されているが、彼の活動は院内だけにとどまらない。複数の飲食店をプロデュースしたり、上場企業の取締役を務めたり。一般社団法人 梅酒研究会の代表理事も兼務している。

「やはり出会いというか、人とのつながりはとても大切で。僕は一般企業の方々と臨床現場をマッチングする役割も担っているんです。たとえば、ミドリムシの大量培養で有名なユーグレナさん。サプリメントは通常臨床試験をおこなわないのですが、江戸川病院で3本ほど臨床試験を実施しました。IT企業とコラボしてVRをオペ室に導入し、開腹前から臓器を映像で確認できるような取り組みも進行中です」

虎の門病院やがん研究会有明病院といった医師としてのエリートコースから、自らの意志で江戸川病院に移った明星氏。その根底にあるのは、とどまるところを知らない挑戦心だ。

「お金儲けが主軸になってはいけないので、報酬はあくまでも医師としての給与がほとんどです。でも、自分にしかできないことが実現するかもしれない。そう思うとワクワクして、動かずにはいられないんです。江戸川病院は『患者さんのためにこれをやりたい』と言えば受け入れてくれるので、とても充実した毎日を送っています」

病院という既成概念を超えていく江戸川病院と、医師という既成概念を超えていく明星氏。両者が共鳴し合ったのは必然だったのかもしれない。

FAVORITE ITEM

明星先生の愛用アイテム

株式会社ユーグレナ

パラミロン DX

59種類の栄養素が含まれているミドリムシのサプリメントで、もう5年ほど飲んでいます。パラミロンという成分が腸管からの糖質や脂質の吸収を抑制してくれるんです。毎日外食しているのに体型をキープできているのも、ミドリムシのおかげかなと。酒も飲むのでビタミンが減っちゃって、以前は口内炎に悩んでいたんですが、これを飲み始めてから1回もできてないですね。

http://www.euglena.jp/business/food/